計画性のない元美大生のキャリア設計

「美大生が社会人になるってどゆこと?就職ってすべき?好きを仕事にするってできるの?‥‥大丈夫、病気で休学したり単位が足りなくて留年したりした先輩もなんとかやってるよ!みたいなことを、お前の言葉で伝えてほしい」

ざっくり言ってそんな用命がS教授から来たのは、2013年7月のことでした。

身の丈の身の上話ならできます、ってことで9月に新宿の椿屋珈琲で打ち合わせ。学生時代にお世話になりっぱなしだった教授と会ったのは何年ぶりだろう。クラスメイトと結婚したことを報告せずにいた不義理を詫びるも、先生は終始笑顔。昔と変わらず福山雅治よりも低い美声に、おのずと背筋が伸びる。

聞けば講義の日程は11月。まだぜんぜん時間ある〜。と思って2ヶ月ほど何もせず、パワポに言葉をまとめたのは前夜でしたが、気がつけば78ページの大作ができあがっていました。

 

11月19日、母校の武蔵美で講義。

『キャリア設計基礎』だったかな?150人くらいの後輩たちを目の前に90分間、自分の学生時代から現在のキャリアまでを話しました。

スライドの一部。質問はTwitterで受けるようにしました。

スライドの一部。質問はTwitterで受けるようにしました。

おおまかにはCINRA.jobさんでインタビューしていただいた内容とかぶることも多いけれど。まずは、今の仕事が学生時代の「制作」と同じで「実験」の要素をはらんでいるスリリングな内容であることを、具体的な事例を通して(話せる範囲で)話しました。

美大の制作と似ていると言いつつも、それは単純な創作活動ではなく経済活動でもあること、学生時代には有耶無耶にもできた「納期」や「事情」の存在、そして「課題解決」のためにやる仕事であることなんかも、しっかり押さえながら(この辺の話をしていると自分で自分に説教しているみたいでつらい‥‥)。

さまざまなプロフェッショナルたちの力が結集して、実現不可能と思われていたことが具体化される。その醍醐味は武蔵美にいた頃の創作とは比べものにならない規模感とスピード感。スリリングで楽しい。

けれど、学校の12号館に籠もってみんなに手伝ってもらいながらつくった作品だって、小宇宙の中で果てしなくスリリングで楽しかった。あれは逆に「卒制」という独特な時間軸の中でたっぷりと試行錯誤できました。何度も何度もやり直しながら、無駄を踏みながら、自分なりの切り口で自分なりの美を形にできた。時間をかけることが仕事だったと言ってもいいかもしれません。今となってはその時間が財産。

卒業制作をまとめたポートフォリオ。

卒業制作をまとめたポートフォリオ。つくったのは、3メートル四方の水を張ったスクリーンに映像と静止画を投影するインスタレーション

 

仕事の紹介をしたあとは、武蔵美で僕がどんな風に過ごして「広告」や「インタラクティブ」という進路に出会ったか?について。

もともと高校時代に『広告批評』と『ACC CMフェスティバル』に出会い、大貫卓也さんに憧れていた自分。一浪して入った大学で大貫さんの講義を聴講して大興奮し、CM論という授業で元電通の小田桐昭先生と出会えた。小田桐先生の授業の中で岡康道さんに心酔した。中島信也先生の授業で「おもろい大人がいっぱいいる」ことに未来が明るく感じられた。

大事なことは「心の師匠を複数人もつ」。

(ここで『プロフェッショナル 仕事の流儀』風にピアノでぽーん!と鳴ってほしい)

僕自身でいえば、この講義を依頼してくれたS教授と、前述の小田桐先生。

ポイントは「複数人」です。ひとりの大人に傾倒するのは、自分に幅を持たせる意味では逆行しちゃうから。指針がたやすくぐらついてしまう若いうちだからこそ、心の師匠はひとりに絞り込まなくていい。ドハマりするけどちょっと浮気性、くらいがちょうどいい。と思います。

さらに言うと、(僕はなんだかんだで6年いたけど)4年間で追求するテーマもひとつに絞り込むんじゃなくて、ふたつの間を行ったり来たりするくらいが逆に深みを与えると思う。僕の場合、映像学科で写真を専攻し、写真をギャラリーで展示したりWeb上で毎日アップロードしたりする表現行為と、好きだった広告の世界が重なり合ったところに、将来的な行き先となった「Web広告」、「インタラクティブ広告」がありました。

その進路決定は行き当たりばったりで「キャリア設計」などという明確な指針は皆無。でも足場を二つもつことでいい迷いが得られたんだと思います。写真家になるのか?なりたいのか?広告制作者になるのか?なりたいのか?僕なりに迷うことができた。写真をやる中でWebにアップしたり、その写真が海外の人から感想をメールでもらえるようになったり、宣伝のために始めたBlogに反応があったり、そういう経験の先に「あるお題を達成するために、コミュニケーションで人を動かす」というテーマが待っていた。それが飯の種になった。そんな感じです。

だけどそれも振り返ってみて初めて、点と点がつながって見えてきたこと。渦中にいる学生時代というのは気づけないものです。気づくのは後でもいいから、超めぐまれた今の環境を使い倒しておくれ!‥‥老婆心で話しました。ま、そんなことは、外からなんと言われようが、卒業してみないと分からないんだけど。

 

僕のいた映像学科では、3年生の冬に学科全体で「進級制作展」という卒業制作のプレみたいなイベントがあります。
広報の責任者になった僕は、今見たらどうしようもなくしょぼい公式サイトを作り、90人の同級生から作品タイトルとコメントと顔写真を集めてパンフレットも作り、学内に貼るポスターも友達とデザイン。その作業の中で、大事にしたことが2つあります。

ひとつは、パンフレットのプロフィールは必ず顔写真を掲載すること。

シャイボーイ、シャイガールの多い美大です。晒すのは顔じゃなくて作品だろう、と考える人が多い美大です。案の定、顔写真なんてアルバイトの履歴書以外で提出したくないと言い出す人たちも少なくなかったけれど、伏し目がちでもシルエットでもいいから、写真であることにこだわりました。

理由は、卒業後にふとこのパンフレットが部屋の奥から出てきたときに「時間の経過」を感じてほしかったから。卒業アルバムのように。それにはイラストじゃなくて顔写真がマストです。進級展の図録にそんな機能は不要といえば不要ですが、ただ必要に迫られてつくる、というのがイヤだったんだと思います。

もうひとつは、お客さんの導線をリアルタイムに修正すること。

人の流れが悪いところを見つけては、案内板を毎日つくって問題の箇所に貼り出していきました。当時は佐藤可士和さんの「行動デザイン」という言葉にシンパシーを感じていたので、「行動をデザインするんだ!」と鼻息荒くやってました。今の仕事でやっている修正作業となにひとつ変わらない。

展示を「運営」の側から関われたことが、今の広告業をする上での下地になっているのは間違いないです。

 

最後に。

大学という場所は、20歳そこそこの人間にとっては吸収しきれないほど恵まれたモノやコトやヒトであふれています。その環境の中で、あとの人生を運命づけるほどの原体験をどれだけ得られるか?

同じ環境にいても在学中からアーティストとしてデビューして名を馳せるカリスマくんもいる。今はTwitterやSNSでつぶやけば世界に作品をUPできる。その開かれたフィールドで「いいね!」をたくさんGETしている「友人」を見て焦る必要はないと思います。数値に換算できなくても、分かりやすい形で目に見えなくても、親は説得できなくても、原体験は今も体験中かもしれない。大事なのは「自分と対話すること」。うわー、まじめだ。

 

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なんでも効率化が叫ばれる今の時代に、
親に土下座して高い学費を払って
美大なんてところに来てしまったあなたに。

Instagramやお絵かきアプリでオシャレな写真やイラストが
誰でも「作れる」時代に、それでも自分でなにかを
作ろうとする殊勝なあなたに。

この先、自分の「強み」や「好き」を発揮する場所は
想像以上にいくらでもあること、なければつくればいいこと、
そのために今、原体験を得ること。

そのために、大学へ「通う」こと。

以上を、休学と留年をしたダメ先輩からの贈る言葉とします。
来ている人たちに言っても意味ないんだけど。

90分間も得体の知れない人間の話を聞いてくださってありがとうございました。

 

追伸。

当時公開中だった映画のイ・ビョンホンみたいな写真が撮りたい!と言って撮った一枚。

当時公開中だった映画のイ・ビョンホンみたいな写真が撮りたい!と言って撮った一枚。

久しぶりに訪れた母校のゼミ室で、進級制作展のために撮った自分のプロフィール写真のコピーが貼られているのを発見。

10年前の自分とまさか対面するとは‥‥。
「時間の経過」を感じずにはいられませんでした。

てか、誰が貼ったんだ‥‥。

やさしくてノリの良い友達に恵まれてたんだなぁ。

Cannes Lions 2013 Book Project

2013年8月31日、代官山蔦谷書店にて、とある本の出版記念イベントがありました。でも、そのとき肝心の本はまだ完成していませんでした‥‥どゆこと?

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『Cannes Lions 2013 Book Project』。

雑誌『広告批評』元編集長の河尻亨一さんが立ち上げ、オンライン上に集った約250名(8.31現在)の広告関係者やカンヌウォッチャーが今年のCannes Lionsの事例やトピックをアップ。それを一冊の本に編むリアルタイム・クラウド編集会議&雑誌制作プロジェクト。

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中村洋基のクリエイティブ千本ノック!

Webデザインの専門誌『Web Designing』さん主催のワークショップ、中村洋基のクリエイティブ千本ノック!に参加してきました。

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100人ちかい受講生と、洋基さん、そしてゲストにサントリー酒類の宣伝部の方がでっかい会議室に集まり、「サントリー ザ・プレミアム・モルツのWeb広告を考えよ!」というテーマで進行しました。

8つ(もっとだったかな?)に分かれた6〜8人ほどのチームでブレストをする前に、洋基さんから、「企画で気をつけるといい3つの要素」について。

 

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1:人間のインサイト と 技術のインサイト

よく、広告制作では「インサイトを突くといい」なんて言います。インサイトとは、うちに秘めたる欲求のツボみたいなもので、それを押すといいよーなんて言うけれど、PARTYは(←僕は、だったかも)そのインサイトがヒューマンインサイトとテクニカルインサイトのふたつあると考えていて。

ヒューマンインサイトは、人間の欲求。
テクニカルインサイトは、技術の可能性。

広告コミュニケーションはもともとヒューマンインサイトに則って企画化していくものだけれども、ことデジタル領域においてはテクニカルインサイトがあると他人のアイデアとかぶりにくい。そこが強みなんだから、テクニカルインサイトはバカにできない。

例:ミッシング・チルドレン(中国・Cannes Lions 2013 モバイル部門受賞)

中国では毎年2万人以上の子供が誘拐され、ストリートチルドレンになっている。そこで、ストリートチルドレンの写真を撮って送ると児童保護団体のデータベースに登録されている誘拐された子供の写真と顔認識でマッチングするアプリを開発。今までに600人の子供の身元確認ができた。

⇒ヒューマンインサイト(困っている人を助けたい/いいことしたい/子どもは宝、守りたい)
⇒テクニカルインサイト(顔認識/データベース)

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2:NOWISM いまを共有する。

Snap Chat・・・10秒だけ残す写真共有アプリ。
http://gigazine.net/news/20130822-snapchat-review/
今だけを切り取り、その瞬間だけを共有する。これがアメリがで流行ってる。

「いま」の価値が高まっている時代。

音楽でいえば、CDが売れない時代にLIVEの価値が上がっている。

言い換えれば、ストック型⇒フロー型へ。

たとえば、キャンペーンサイトの数が減っている。どうしてか?
何ヶ月もかけて頑張って作っても、今はTwitterに載ると一瞬で洪水に巻き込まれ、終わる時代。昔はもうちょっと息が長かった。今は消費が速すぎて、打ち上げ花火が瞬間すぎることに作り手も広告主も気づいてきたということかもしれない。

そんな中、Red BullのStratos。

2012年10月14日(日)昼 【日本時間 10月15日(月) 早朝】、レッドブル・アスリートのフェリックス・バウムガートナー(オーストリア人、43歳)が、アメリカ合衆国 ニューメキシコ州ロズウェル上空39,014メートルの成層圏からジャンプし、フリーフォールの世界新記録の樹立と、高高度での安全性の発展に向けた情報収集を目的としたミッション、Red Bull Stratos(レッドブル・ストラトス)を成功させました。(公式サイトより)

リアルタイムに2億8000万人が見た。
究極のLIVE体験。

 

NOWISMって、もっとシンプルにいえば、「バルス」。

「メディアや企業も参加し、過去最大の規模となったラピュタの“バルス祭り”。秒間14万投稿と世界記録を更新」ITmedia 記事より

 

考えるときのヒントは、「極端にする」ということ。

企画するとき、「お祭りか、継続か」を選ぶ。
今を共有する最高のお祭りをつくるのか、リレーションを築くコミュニケーションをつくるのか、を意識してみる。

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3:ブランド

ブランドとは、ひとことで言えば、名声。

アウディやベンツよりも日本の軽自動車の方が値段も燃費も優れているし日本の路上には適しているんだけれど、それでもベンツを買う人がいる。それはブランドがあるから。

さらにブランドが持っているチカラとは、商品や会社の存在が、人々の幸福に直結するということ。

例:Olympics P&G – Thank You Mom Commercial

 

例:Dove Real Beauty Sketches

 

ブランドのメッセージング⇒生死、家族、美、恋愛、健康、お金・・・全員が共感できることを真ん中に置くと、効く。

他社と差別化することにこだわらない。「他社より優れてます!」「シェアNo.1」じゃなくて、「あなた×生死」「あなた×家族」「あなた×美」「あなた×恋愛」…をつなぐモノ、企業。

真に言うべきことはなにか?アウトプットは強いか?を意識してみよう。

言い換えれば、世界内自己存在意義。

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‥‥この3つのうち、2つでも取り入れられていると強い企画になる。3つとも達成できるといいんだけど、3つ全部というのは難しい。。

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で、ここから課題の説明でした。「サントリー ザ・プレミアム・モルツのWeb広告を考えよ!」

サントリー酒類 Iさまよりオリエン。
洋基さん「Iさんといえば、最近ではトリスハニーのHoney Momentを手掛けた人です」

そうなんです、余談ですが、この日ゲストに招かれたサントリーの宣伝部の方とは、僕がHoney Momentで直接やりとりさせていただいたクライアントの方だったのです。超偶然。そして関わった仕事の名前が出てきて嬉しい。

プレモルの市場動向やコマーシャルについて実際にCMを見ながらご紹介。

ずっと同じ「Shall we dance?」のメロディと矢沢永吉のモノクロCMを続けているように見えて、ちゃんと市場や時代性を見て細やかなメッセージングの調整を行っている、というお話。たとえば、特別な日だけに飲む高級品と捉えられすぎて日常飲みでは売れづらくなったと感じられたら「金曜日はプレモルの日。」というメッセージで日常的にも買いやすくなる土壌をつくる、など。じつはとっても戦略的。

 

と、TVCMをひととおり見てから、Web、インタラクティブを使った広告クリエイティブのブレスト開始。

 

━━━━━【洋基さんよりブレストのルールを提示】━━━━━

★まずはタネでいい。
⇒プレモルあるある or 技術あるある。

★紙に書いて共有しよう。
⇒飛び交うコトバを紙で文字に落としていくと、さらに広がる。

★まずはなんでも出してみよう。
⇒うんこみたいな話から黄金のうんこが生まれることも。

★人のアイデアを否定するのは最後にしよう。
⇒個別に否定・批判していると閉塞してしまう。発言しづらい空気にもなってダメ。
まずはみんなの考えていることをぜーんぶテーブルの上に出しきろう。
セレクトはその後!

★ブレストは楽しく、雑談しながら。

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‥‥今回は初対面の方々とやるブレストだったので、腹の探り合いみたいなところに思いのほか時間を要しました。ブレスト慣れしている人とそうでない人との温度差がハッキリと出てしまったのも反省点。そのぶん、ふだんの会社で気心知れたメンツとブレストできる環境のすばらしさに気づくこともできたかな?

ワークショップの中心である課題企画の提出と講評については、個々の企画について紹介せねばならないので割愛します。ただ、1位になったチームは最初に洋基さんがお話しされた企画のポイント3箇条をすべて網羅していて、学ぶところが多かったです。

ワークショップの中心である課題企画の提出と講評については、個々の企画について紹介せねばならないので割愛します。ただ、1位になったチームは最初に洋基さんがお話しされた企画のポイント3箇条をすべて網羅していて、学ぶところが多かったです。

 

とても無料とは思えないほど充実した時間。この模様は次号のWeb Designing誌に掲載されるそうなので、楽しみです。

Cannes Lions 2013プレ勉強会

6月です。カンヌライオンズの季節が近づいてきました。

今年はPerfumeがゲストパフォーマーとして出る!という、広告関係者視点ではなくPerfumeファンクラブ会員としても俄然注目のイベントになりそうですが、その前にちゃんと(?)賞レースにあがってきそうなものをピックアップして好き勝手に予測しようぜ!ってことで、6月7日(金)、Cannes Lions 2013プレ勉強会に行ってきました。

『広告批評』元編集長の河尻亨一さん主宰、ゲストは毎年恒例・kiramekiの石井義樹さんによるプレ勉強会。副題は「今年は工作系(メイカーズ)来んじゃね?」。今回で4度目の開催だそうで、僕にとっては3回目の参加です‥‥が、仕事の関係で大幅に遅刻。それでも最後にプロジェクターに映し出されたスライドに感銘を受けたので、行った甲斐はありました。その話は最後に書くとして。

会場で受付をされていた方がその日流されていたコマーシャルやプロモーションをまとめてくださっていたので、いくつかピックアップします。

 

イギリスの公共テレビ局 チャンネル4によるパラリンピックのコマーシャル。勝負師の顔にゾクゾクする。あまり馴染みのなかった彼らの競技を見てみたいと思う。多民族で形成されているからでしょうか、身体障害者への理解は欧米の方が進んでいる気がします。

 

学校の唯一無二の美女、スーザン・グレン。ただひたすら彼女をありったけの美辞麗句で荒唐無稽に称えるナレーション。「スーザンが近くにいると僕の震度計は8を記録し、彼女の周りの女たちはゴブリンみたいになる」。そして「If I could do it again, I’d do it differently.」(もしもう一度やり直せるなら、今度は別のやり方にする)と現在の男(なんと奴!)が語り終えると、AXEとともにFear no Susan Glenn.(スーザン・グレンなんて怖くない)。

男が惚れるヒロインと、男が憧れるヒーローのサンドイッチ。すばらしい!

 

悪魔に魂を売らなくても手が届く値段のメルセデスですよ。
この悪魔が『スパイダーマン』シリーズでグリーン・ゴブリンを怪演したウィレム・デフォーってのがいい。昨年、同じスーパーボウル枠のCMでクライスラーがクリント・イーストウッドを起用して話題になりましたが、ハリウッドスターの説得力というのはすさまじいものがあります。

ちょっと余談だけど、ドコモのdビデオに出てくるロバート・デニーロも顔だけでこの説得力。

 

クルマ続きで。

「Audiに乗って自信が持てた」
いいパパだなぁ。親子で乗ってカッコイイのって、Audiかもなぁ。と思わせてくれるCM。

 

『Smoking Kid』

路上でタバコを吸う喫煙者に、少年や少女が駆け寄って「ライターを貸して下さい」とお願いをする。すると喫煙者は必ず「え?」といった反応を示し、「タバコは健康によくないんだよ?」や「寿命が縮まるんだよ?」などと、子どもたちに対して優しく説明をし始める。タバコがどのように体によくないのは、理解しているのである。そして子どもたちは「じゃあ、なんであなたはタバコを吸っているの?」と逆に問いかけつつ、そっと手紙を喫煙者に渡す。そこには「あなたは私の心配をしてくれた。でも、なぜ自分自身への心配はしないの?」と書かれているのである。

(ロケットニュース24「タイの禁煙プロモーションCMが心にガツンとくると世界中で話題に」より)

これは見てて辛くなりました。ただ、「効く」だろうなぁ。

 

コカコーラ『Small World Machines – Bringing India & Pakistan Together』

第二次大戦による分裂以降、対立が続くインドとパキスタンを結ぶベンディングマシーンをコカコーラが提供。これは取り組み自体もさることながら、プレゼンテーションビデオが素晴らしい。本当にこんな風にハッピーな風景が生まれたのかはちょっと懐疑的ですが。絶対ダンスする人いるよな(とか思っちゃう)。

参照:対立関係の続くインドとパキスタンの国民がコカ・コーラ社のキャンペーンで笑顔に / 世界にも感動を与える

余談ですが、BGMの「Go Do」はプレゼンビデオによく多用されますね。

 

Ram Trucks『Super Bowl Commercial “Farmer”』

「だから神は8日目に農夫をつくった」という言葉がつづく、農作業用トラック会社のCM。重厚なHDR写真はよく見ると微妙に視差を生む角度をつけていたり雲が流れたり、見る者を引き込む細かな演出がされています。ナレーションはPaul Harveyというアメリカの有名なラジオパーソナリティ(2009年に90歳で没)による演説だそうです。

 

メトロ・トレインズ・メルボルン『Dumb Ways to Die』

オーストラリアの鉄道会社による事故防止啓蒙ビデオ。Dumb Ways to Dieとは「おバカな死に方集」。コミカルな死に方に笑って見てしまうけれど、実際、こういうマヌケな死に方が後を絶たないらしい。ソーシャルで流行る「キャラクター」「歌」「シンプルなメッセージ」が三拍子揃ってて、ACの『あいさつの魔法』を思い出しました。毒っけは比べものになりませんが。

ちなみに、カンヌの前哨戦ともいわれるOne Showでグランプリを受賞。

参照:かわいいキャラが歌に乗せて死にまくるメルボルン鉄道公式のアニメムービー「Dumb Ways to Die」 – GIGAZINE

 

Dove『Real Beauty Sketches』

Doveによると、世界中の女性の4%しか自分のことを美しいと思っておらず、一方でDoveはポジティブな自尊心を築き、女性たちのポテンシャルを最大限まで引き出すことにコミットしているため、女性たちに重要なことを伝えたいという想いからこのビデオを作成するに至ったとしている。そしてその伝えたいとても重要なこととは…

“You are more beautiful than you think. ―あなたはあなたが思っている以上に美しい。”

心に触れるDoveのブランドプロモーションビデオ Real Beauty Sketches [動画]より)

自分のネガティブな証言によって描かれた肖像と、他人のプレーンな証言によって描かれた肖像。シンプルだけどこれほど説得力のあるものもない。拍手したくなるムービーです。

 

さて、ここからは、「今年は工作系(メイカーズ)来んじゃね?」という副題にのっとって、なんか作っちゃった系のプロモーションたちを。

 

『The Popinator』

ポップコーンで有名なお菓子メーカーが「ポップコーンプロジェクト」を展開。「Pop!」の掛け声に反応する“ポップコーン投げマシーン”を開発しちゃいました。

 

『Super Angry Birds – a Tangible Controller』

世界中で人気の「アングリーバード」にリアルなコントローラーを作っちゃいました!手作り感満載だけど楽しそう。3人くらいで綱引き状になってて200インチくらいのスクリーンでやったら盛り上がりそうですね。

 

『The Most Powerful Arm』

筋肉が急速に衰える筋ジストロフィーへの寄付を訴えるメッセージ。筋ジストロフィー症の女性が呼びかける言葉をロボットアームがたどたどしく書き起こします。キャンペーンサイトに行って寄付すると、このロボットアームが署名してくれるようです。10日間で20,000人分のサインが集まったとか。

 

他にもいろんな事例が紹介されたようですが、最後にスクリーンに映し出されたショットがこちら。

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80歳代のおばあちゃんが勝手に修復作業してとんでもない仕上がりになったキリストのフレスコ画。世界中でパロディが生まれ、遊び尽くされました。しかもスペイン南部にあるこの教会は一躍観光名所となり、入場料を取り始めたら“作者”のおばあちゃんと訴訟問題に発展したとか。

河尻さんいわく「意図して広告にしようと企んだものではないけれど、これだけ世界中で話題になるような出来事をどうやって作り出すか、注目せざるを得ない」と。

ちょうど僕も先日、うちの社長に「今年印象に残ったプロモーション教えて」と訊かれ、Googleの「World Wide Maze」や「キリンのどごし 夢のドリーム」や「リアル脱出ゲームTV」や「TOKYO CITY SYMPHONY」や手前味噌ですがIntelの「PUSH for Ultrabook」が思い出されましたが、どれにも勝って印象深いのはこれ(↓)でした。

女子高生がTwitterに投稿したことで大流行した「マカンコウサッポウ」。これも「おばあちゃんのフレスコ画」と同じく、プロモーションじゃない。けれど日本を飛び越え世界中でこの遊びが流行し、北米のカプコンが「波動拳コンテスト」を開催するまでに至りました。

USカプコンのフットワークの軽さは見習うものがあります。折しも日本では『ドラゴンボール』の映画版が公開中だったので「映画のプロモーションか?」とも囁かれましたが、そういった形跡は見られませんでしたし、もし実際にそうだとしたらここまで流行らなかったでしょう。USカプコンは後乗りだったから良かったのかも。そこがなんとも難しいところで、「広告だとわかった途端に冷める気持ち」とどう寄り添いつつ、面白いものを仕掛けるか?おばあちゃんや女子高生の純粋さがあればこその流行に勝負を挑まないと。そのためには、動機の純粋さではなくメッセージの純粋さが求められるのかな?言葉にすると陳腐だけど。

 

それにしても、アメリカのスーパーボウル枠で放映されるCMでほぼ埋まってしまうフィルム部門の注目作。映像の派手さではなくメッセージの普遍性、人間賛歌で評価が高いものが多いのは最近の風潮でしょうか。どれも心に沁みます。

そして、どうしても工作系といえばおバカな方向で魅力を発揮しがちですが、メッセージを乗せる領域に手を伸ばしている『The Most Powerful Arm』も印象的でした。テクニカルなことやSNSで下支えしながら、確実に誰かの笑顔をふやす仕事がしたい。そう思いました。

クリント・イーストウッドが昨年訴えた「ハーフタイム」=癒やしの時間は、まだ世界的につづいているのかもしれません。だからこそ今「効く」ことを考えたいなと。今年のカンヌライオンズは6月16日から22日まで。僕は日本から見守ります‥‥。

 

おまけ参照:

アドフェスト2013まとめ
(河尻さん編集)

Cannes Lions 2013 Prediction
(Pinterestで予想している人のまとめ)

タグボート岡康道(と僕)の3月14日

3月14日。TUGBOATのクリエイティブディレクター、CMプランナー・岡康道さんのエッセイ集『アイデアの直前 – タグボート岡康道の昨日・今日・明日』の刊行記念トークショーに行ってきました。

トークのお相手は、岡さんとは25年来の付き合いであるCMディレクター・中島信也さん。「とにかくこの本を売って売って売りまくる」という使命感(?)のもと、著書の中から信也さんが文章をピックアップしながらトークは進んでいきました。面白いエピソードが次から次へと出てくる中で、僕が記憶に残ったお話をメモしていきます(なので会話のようで会話形式じゃないです)。

 

岡さん:最初に中島信也さんに企画コンテを見せたときは「なんだか意味が分からない」と断られて、じゃあもうひとりの売れっ子で同じ名字の哲也(CMディレクター 中島哲也氏/映画『嫌われ松子の一生』、『告白』等の監督としても有名)の方にお願いしたんだよね。

信也さん:哲也が作ったのを見ても分かんなかった(笑)。けどいま見たら分かる。僕は奥手というか大器晩成型?成長が遅いんですよ。

 

誰からも特に何も言われない選択。
これが僕たちを取り巻く世界をつまらなくしている。
(著書より)

 

岡さん:インターネット上でのクレームとかツッコミとかがすぐ企業に飛び込んでくるようになって、クライアントは突飛な案をまず除外する。それによって僕らの仕事がずいぶん痩せてしまったと思うんです。だからそれに負けない選択をすればいいんです。誰かに何かを言われてもいいやと。…僕らがやってるダイワハウスのCMは、そういう意味でクライアントが偉いですよね。

 

広告は発信していないのではない。
発信を自ら聞こえなくしている。誰からも特に何も言われない広告をめざすために。
(著書より)

 

岡さん:発信していないというか、自滅しているんです(今の広告は)。自分で辞めているというか。クライアントがセンスがないからとかバカだからとか、そういうことは全然なくて、作り手が「メッセージはやめよう、強く伝わることは避けよう」としている。だけど広告はしなくちゃいけないから、誰からも何も言われない広告を目指すんです。誰からも何も言われない広告って、みんなが知っている人をTVに流すことなんです。だからタレントが出てきた方がいいんです。そしてヒット曲を流した方がいいんですね、かつての。決裁者が青春期を過ごした80年代90年代のヒット曲です。そうすれば誰からも何も言われない広告が出来ますよ。しかも一見メジャー感がありますよね。こうやって広告は自ら聞こえなくしているんだろうな、と思うんです。

 

広告のように不純な表現物がそんなにも健康的であることの不健康さに誰も気づかないのだろうか。(著書より)

 

岡さん:僕らは「明るく楽しいものを作れ」とよく言われるんですね。いけないのはその反対ですよね。でも広告って人に何かを売ろうとしているわけで。つまり目的が不純なんです。それが分かってるから、それをネタとして話せば不健康じゃないじゃないですか。ところが明るく楽しく爽やかに不純なことを企む人って、不健康でしょ?広告自体が健康的であろうとすること自体が病気だな、と僕は思う。逆に言えばすこし不健康な感じのある広告を作りたいんです。

 

信也さん:岡さん、けっこう不健康めのやつ、多いですよね。岡さんが企画したものってパーソナルな感覚なものが多い。それって一般的じゃない。すごく歪んでて。

 

 

つまり場違いとアイデアは一直線上に並んでいるのだ。(著書より)

 

岡さん:アイデアとはマイナーな、場違いなものなんです。それをメジャーにするのがクリエイティブディレクターやCMディレクターの仕事。だから場違いを恐れてはいけない。場の空気を読めない人っていますけど、それもある種、アイデアを言っている可能性があるんです。そういうのを打ち消していって穏やかに速やかに進行する会議って、結局なにも生み出していないことが多い。

 

‥‥というわけで、予定を1時間オーバーし、合計3時間弱にもわたる充実したトークセッションのごくごく一部を書き起こしました。ずいぶん真面目な箇所だけを抽出しましたが、現場は抱腹絶倒、笑いの絶えない3時間でした。とくに信也さんのハゲじゃなかった坊主ネタは鉄板。

「広告はもともと不純なものだ」というお話は、岡さんの電通時代の先輩であり僕の大学時代の恩師でもあるクリエイティブディレクター・小田桐昭さんが授業で仰っていた「広告は猥雑なメディアです」という言葉とリンクしました。

これはその当時(2004年頃?)の講義ノート。

note

授業では「堀井博次特集」「海外CM特集」などと銘打って数々のCMを見せて頂きました。僕がTUGBOATの作るCMのファンになったのは、その中の「岡康道特集」がきっかけでした。

 

 

アイデアの直前 —タグボート岡康道の昨日・今日・明日(Amazon)
大人(50代〜)になることが怖くなくなる、むしろちょっと楽しみになる本です。
自分はこんなにも真摯に生きられるだろうか。

関連リンク:TUGBOAT 10 Years_vol.01

新しい技術による新しい物語のつくりかた by PARTY

「THE PUBLIC」という団体によるセミナー&ワークショップ、

新しい技術による新しい物語のつくりかた by PARTY

の第3回目、川村真司さんの回に参加してきました。
というか、第1回の清水幹太さん、第2回の伊藤直樹さんの回にも出席しているのですが、Blogにアップするのは初めてです。なんとなく。思い立って。

広告、映像、インタラクティブ、エンターテイメント、サイネージなど、あらゆる表現を対象とし、クリエイティブシーンの最先端で活躍するPARTYを講師として、各回、PARTYのメンバーの一名が講師となり、実際に携わっている事例を紹介しながら、実践的なクリエイティブの現場に触れます。(サイトより引用)

川村さんと川村さんのお仕事について、詳しくはこちら

例によって現場でタイプしたメモを元に再構成します。読みやすいように口語調にリライトしていますが正確ではありません。

 

本日のテーマ「作り方から作る」

川村さん:最初、博報堂で3年間CMプランナーをやってました。CM制作も会社もとても楽しかったんですが、当時はCMプランナー=CMというジャンルに活動の幅が制限されてました。今はもっと幅広いと思いますけどね。

で、次第にもっとインテグレーテッドキャンペーン、360度的なアプローチがしたくなって、その思いが強くなり、BBH(イギリスのクリエイティブエージェンシー)へ移りました。日本オフィスの立ち上げを手伝い、シンガポールやロンドンを渡り歩きました。そしてロンドンにいるときに180(オランダのエージェンシー)へ。100人くらいの規模でグローバルなインテグレーテッドキャンペーンをやっている会社でした。しかも、ロンドンでもNYでもなくアムステルダムから。とても刺激的でしたが、ここも3年で辞めました。

思い返せば各社を3年周期で転職してきました。分かったことが1つあって、どこの会社も違うカルチャーを持ってはいますが、仕事の進め方は一緒。要は、大事なのは人とフットワークの軽さなんだなと。そして2011年にクリエイティブラボ・PARTYを設立しました。

 

PARTYだと、非広告、ブランドコミュニケーションも仕事にできます(領域に制限がない)。メインの哲学、行動指針は「クリエイティブ・ラボ」。もっと自由に、実験しながら進められる場にしたいという思いからそう名乗っています。

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コピーの今とこれから_3/3

TCC(東京コピーライターズクラブ)50周年特別企画のトークショー、
『コピーの今とこれから』レポート、最終回です(1回目はこちら、2回目はこちら)。

 

udon谷山さん:今年、「うどん県」っていう言葉が流行語大賞にノミネートされたんですね。でもTCCの新人賞には入らなかった。1票差で落ちちゃったんですよ。おそらく、「うどん県」って上手っぽくないんですね。テクニカルじゃないというか。でも世の中に広がったんですよね。

秋山さん:あれだけ見るとピンとこない。現象として見ないと。レディー・カガの方がまだピンとくるね。

谷山さん:レディー・カガも新人賞に落ちたんです。

秋山さん:あれも入ってないの?

谷山さん:入ってないです。

佐々木さん:うどん県とレディー・カガを落としたのは今年のTCCの汚点‥‥。

谷山さん:そこまで言いますか(笑)

佐々木さん:まちがいなくヒットしたし、話題になりましたからね。今後はいろんな県が「うちもうどん県みたいなのやろうよ」とか言うのが容易に想像できますし。だから来年に敗者復活賞をあげるとか。

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