カンヌ勉強会 2014 – ダイレクト系など

昨日のカンヌ勉強会 2014 – フィルム系に続き、河尻さんによる、ダイレクト、プロモ、チタニウムなどで受賞しそうなものをピックアップ。

 

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河尻さんチョイス
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▼ FIRST KISS

WREN(ウォーレン)というアパレルブランドの服を着ている男女。初対面同士の彼らにカメラの前でラブシーンを演じてもらうドキュメントフィルム。「素人」が何かするのは定番になっていて、キスまでしてもらえるようになった。素人がファッションモデルの代わりをしている。
YouTubeで8,000万ビューを超えている。

 

▼ Skype – Stay Together

フィルム系だけど、これも「素人」が出ているシリーズ。血も通わないようなイメージのSkypeがやっているという面白さ。笑いを求めてない。感動を求めている。感動はシェアを生みやすい。

【COMMENT】
笑いは文化的な背景や笑いに対する成熟度などに差異が出てしまうので、それに比べて感動系の方が広くあまねく共感を得やすいんでしょう。あと、素人が主人公になるというのは世界的な流れなんですかね。

 

これもフィルム系だけど‥‥

▼ John Lewis Christmas Advert 2013 – The Bear & The Hare

ディズニーのチームが手がけたらしい。

じつは全編CGではなくコマ撮り撮影で作られた!という驚きもある。

メイキングを見ることで二度驚く。そんなメイキングを見せることももはや当たり前の手法になりつつある。

 

▼ Digital News paper holder

アワードムービーの典型。社会的背景、問題点→アイデア→メイキング→仕組み(図説)→効果→成果。

 

▼ British Airways – #lookup in Piccadilly Circus

子供の頃を思い出させるビジュアルをインタラクティブに再現しただけでなく、ビルボードには飛行機のフライトナンバーや目的地なども表示されるとのこと。でも単純に素敵。

ケーススタディビデオもあったのでご紹介します。

 

▼ MILKA – LAST SQUARE

パッケージにIDが書かれていて、それを元に「ひとつだけ欠けたチョコ」を大切な人に贈れるサービス。企業姿勢を体現。

河尻:チョコ1欠片もらって嬉しいんかな?っていうのはありますけどね(笑)。
石井:でもリアルに1つ欠けたパッケージになっていて、それを贈るところまでやってるのはすごい。パッケージのビジュアルが上手い。

 

▼ DHL – DHL is Faster

温度で変わるインクを仕込ませた箱を用意して、ライバル社に運ばせる。
河尻:「なかなか挑戦的ですけどYouTubeでもそんなにバズってなくて(笑)」

【COMMENT】
騙すという手法は昔からありましたが、そこにテクノロジーを上手く使っていて、かつ、さほど手が込んでいない(シンプル)という点に好感を持ちます。

このほかで上手な「騙しの手口」としては、オランダの『Sweetie』がすごい。

児童売春の撲滅を目指す団体が仕掛けた、CGの「10歳のフィリピン人少女」。1,000人以上が検挙されたという実績が評価されそうです。
これ自体はぜんぜん「広告」じゃないですが、このYouTube動画から団体への寄付ができるようにもなっています。

 

▼ NAR mobile – Life saving cable project

スマホ同士をつなげるケーブルで、充電を分け与える仕組みを通して献血を訴えた。
分かりやすいけど本当にこんなことできるのかな?

 

▼ social swipe

カードをスワイプすればパンが切れる。=募金になる。
見れば分かる。ビジュアルのつくり方が上手い。

【COMMENT】
British Airwaysもそうですが、デジタルサイネージ広告にインタラクティブ性が加わったものは、元々が交通広告という「通り過ぎて無視される」という問題との闘いであることを考えると、ビジュアルもオチも分かりやすいことが大前提。その意味でsocial swipeはさらにソーシャルグッドな意味合いもプラスされてて素敵だと思いました。

紹介されていなかったデジタルサイネージの事例で個人的に好きなのはコレ。

Unbelievable Bus Shelter | Pepsi Max

あと、コレも。

Photoshop Live – Street Retouch Prank

コレも分かりやすい。

 

▼ climate name change

one show受賞作。
台風の名前は人名(カトリーナなど)だから、自分たちで決めたい。
気候変動がこんなに起きてるのに何も政策を立てない政治家の名前をつけてやろう!というNPO団体の運動。
石井:去年も似た考えのがありましたよね、ロシアで。
河尻:悪路を放置する行政に対して、その道路で政治家の顔を描いて、工事させることで消させたやつですね。

 

 

そろそろウェアラブルも出てくるのでは?

▼ Ravijour – TRUE LOVE TESTER

Ravijourという、セクシーさが売りの下着メーカー。
制作はPerfumeの演出でおなじみのライゾマ!いいなぁ。

 

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カンヌ現地の情報
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・今年は97カ国から37,400エントリーがあった
・カンヌ現地では三位一体の楽しみ方をしましょう

 CELEBRATION:賞としてのカンヌ
 LEARNING:60個あるセミナーも出た方がいい。ルー・リードとか(※)。
 NETWORKING:10,000人が交流を深める。名刺が何枚あっても足りない。ヘッドハンティングも。

1日に1回、人気セミナーをYouTubeで生中継しているので見てみましょう。

※今年はU2 ボノとAppleのデザイナー、ジョナサン・アイヴが登壇するとか。

cannes_guest

石井:現地で学ぶ広告漬けの1週間なんてない。自分は何ができるだろう?ということを見つめ直せる機会。行かなくても分かることももちろんある、が、世界一の広告祭としてそこにしかない熱がある。日本から抱えてきた仕事もあってパーティーもあって今年はW杯もあるから寝られないけど、それもひっくるめて修行みたいな重要な場所。

・日本にいる人は受賞速報とセミナーまとめを活用しましょう

6/28(土)14:00〜17:00
報告会をやられるそうです。

 

以上です。

最後に、河尻さんが「時間がなく紹介できなかった」作品をFacebookにアップされていたので、そちらをコピペして終わりにします。

▼ 43dbオーケストラ

▼ Google“Night walk in marseille” 
https://nightwalk.withgoogle.com/en/home

▼ giraaf

▼ spotify“forgotify”
http://forgotify.com/

▼ coca-cola – Radar for Good

★Sound of Honda“Ayrton Senna 1989”

これもライゾマティクス制作。素晴らしい。プロの仕事。

★NYC Recalling 1993 

 

6月15日からのアワードの現地速報が楽しみです。

 

関連記事:カンヌ勉強会 2014 – フィルム系

カンヌ勉強会 2014 – フィルム系

2014年も6月に入り関東は梅雨に突入‥‥と同時に広告業界ではCannes Lionsの季節の到来でもあります。

今年は6月15日〜21日に開催。

今年は6月15日〜21日に開催。僕も5つの仕事でエントリーしてます。。

今年も銀河ライター 河尻亨一さん(編集者)とキラメキ 石井義樹さん(CMプロデューサー)によるチョイスで「今年のカンヌ」を予想するプレ勉強会が開かれました。キラメキのオフィスでワインあけながら4、5人でやってた頃がちょっと懐かしい、100人規模の大きなイベント(しかも場所は京橋の東京スクエアガーデン)になっててびっくり。

 

以下にまとめてみましたが、「10 over 9」原口さんのNAVERまとめも分かりやすい&内容はほぼ一緒なので、そちらもオススメです。僕は僕で感想や他の事例も折り込みつつ書いてみます。

NAVERまとめ:前編(フィルム、フィルムクラフト部門への予想)
NAVERまとめ:後編(ダイレクト、PR、プロモ、デザイン、サイバー、モバイル、アウトドア、チタニウムなどへの予想)

 

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予想しにくい
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One Show、Newyork Festivalがあったものの、今年はCLIOが秋に移動しちゃったので予想しにくい。また、昨年が60周年ということもあり総じてレベルが高かったので今年は揺り戻しで低いかも。今年突然出した作品がダークホース的に受賞しちゃうかもしれない。

 

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クルマのコマーシャルが面白い
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▼ Volvo Trucks – The Epic Split feat. Van Damme (Live Test 6)

One Showグランプリ

石井:今年のグランプリ候補はこれなのかなー。他に強いCMがあまりないから。「最後にオチと意味がわかる」という、昔からのカンヌの(広告の)文法。圧倒的なクオリティ。英語がわからなくても、ボルボのトラックのスタビリティが優れていることを言ってるんだなーというのは伝わってくる。いわゆるLIVE TEST(実証広告)。

じつは6つあるシリーズのひとつで、これのティザーがまたイイ。

ヴァンダムのうろたえっぷりがカワイイ。
河尻:メイキングじゃなくてティザーなんですね。

 

▼ Volvo truck dynamic steering

これもOne Show獲ってる。

河尻:オチはバレるものだから最初から伝える。
実験、テスト的な作品。やってみた系、エクストリーム系
それをいかに広告ぽく見せないか。エンタメですらある。

【COMMENT】
そういえば昔、Googleも「SPEED TEST」(※)で湧かせましたが、実証広告ってバカバカしく極限に挑戦するというだけで笑えるし、男子小学生っぽいノリにその企業を好きになってしまいそうになる。Volvoはエンヤの品も無駄にあって、ディレクターの料理が素晴らしい。無駄に掛ける美学、の贅沢さ。

※Google – SPEED TESTS

 

▼ Honda – Illusions

石井:初っぱなでネタのからくりが分かっても騙されっぷりが気持ちいいからシェアされていく。シェアされることを意識して作っている。ロンドンのCMプロダクションgourgiosのクリス・パルマー監督(カンヌ常連)による仕事。近年多い流れとして、トップクラスの監督やカメラマンと制作費を使って、YouTubeでバズることを意図している。

たとえばthe mill(※)という世界有数のプロダクションが、どこまでが実写かを分からせないくらいのクオリティで映像をつくってYouTubeで爆発的にシェアされる時代。

【COMMENT】
the millがつくったCMで最近話題になったモノといえば、NIKEの「Winner Stays」。

お金かかってますね。贅沢さにアッパレ。

 

▼ Honda – Hands

石井:明らかにカンヌを取ろうと思ってる感がありますけどね(笑)。
ホンダの名作「The Cog」(※)からの流れを汲んだ「ナット1個からはじまるモノづくり精神」を手のひらで見せていくというシンプルさ。これまでの海外の作品が詰まってる、オマージュみたいな作品。

【COMMENT】
※The Cog(2003年)

古さを一切感じさせない。

 

▼ フォルクスワーゲン – Wings

スーパーボウルのCM。

 

▼ Chrysler and Bob Dylan Super Bowl Commercial

一昨年のクリント・イーストウッド(※)からのシリーズ。
今回はボブ・ディラン。アメリカの車づくりは最高であるというメッセージ。

※It’s halftime in America(実際、スーパーボールのハーフタイムに放送された)

 

▼ Video Bob Dylan
http://video.bobdylan.com/
撮影した物をTVみたいにザッピングでき、like a rolling stoneのように見られる。

 

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感動!
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▼ Apple Holiday

石井:個人的に好きなのはコレ。
One Show獲ってますね。感動系。カンヌでも何か獲るんじゃないかなと思ってる。
監督はランス・アコード。

ランス・アコードといえば‥‥これも。

 

▼ P&G Thank You, Mom

ソチ・オリンピックのP&Gの広告。
ロンドンオリンピックの続編。当時もゴールドを獲得。家庭用品をずっと作っているブランドとしてストレートなメッセージ。

ランス・アコードは元々カメラマンで、『マルコヴィッチの穴』や『ロスト・イン・トランスレーション』の撮影監督。VWの『the Force』(2011年)で監督として名前が売れた。長尺の編集が上手い。

 

▼ Google We’re All Storytellers

検索が可能性を拓くというGoogleならではのCM。

 

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笑い!
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▼ Old Spice シリーズ

良いにおいになった息子がモテるからナイスじゃない、けどつけたらモテるという話。
グランプリじゃなくてシルバーあたりを獲りそう。

 

▼ Budweiser Super Bowl XLVIII Commercial — “Puppy Love”

河尻:子犬と馬の話がアメリカ人は好きなんでしょうね。
カンヌって笑いのCMの殿堂みたいなとこがあった。今は違うけど。

 

▼ 2014 Super Bowl XLVIII Ad “Ian Up For Whatever”

パーフェクトなことばっかり起きるビールが「BUD LIGHT」というメッセージ。素人を使ったドッキリ企画だが、賛否両論あった。

 

冒頭でも言われていましたが、総じて今年は小粒な印象だそうです。それは昨年がカンヌ創立60周年記念で気合いの入ったCMが多く見られた分の揺り戻しか?という話も出ていましたが、フタを開けてみなければ分かりません。というわけで、明日は河尻さんパートの「ダイレクト、PR、プロモ、デザイン、サイバー、モバイル、アウトドア、チタニウムなどへの予想」をまとめてみます。明日につづく。

Happyこそすべて

Pharrell Williams – Happy

このWebサイトがクレイジーで気持ちいいんです。

アメリカのシンガーPharrell Williamsの“Happy”という新曲のために公開されているこちらのサイトは24時間ぶっ通しで見せるユニークなプロモーションビデオ。

どんな趣向かというと、およそ4分の曲を24時間ひたすら連続再生でループし、その間一曲毎に毎回違うダンサーがそれぞれのパフォーマンスを見せるというもの。
その場のシチュエーションなどはその時間に対応したものになっており、ユーザーは自由に時間を進めたり戻したりしながらダンサーを次々と切り替えていくことが出来るインタラクティブな造りになっています。

K’confより)

http://24hoursofhappy.com/

どこをどう切り取ってもカッコイイ

AM10:00のファレル。

AM10:00のファレル。

さまざまな、Happyなダンスが「24時間」つづく。

さまざまな、Happyなダンスが「24時間」つづく。

ところどころに出てくる有名人を探すのも楽しく、シンプルなルールでいつまでも見続けられるのは本当に気持ちいい。YouTubeでは再生回数が2億を突破しているとか。

世界各国の都市バージョンも派生しているらしく、たとえばスター・ウォーズ(都市っていうか星じゃん)。

そして4月29日、原宿バージョンも公開されました。

出演者は、オープニングを務めたファッションブランド「FIG&VIPER」クリエイティブディレクター植野有砂をはじめ、渋谷区長の桑原敏武やビームス代表取締役社長の設楽洋、ユナイテッドアローズ取締役会長の重松理、SHIMAの奈良裕也、FALINEオーナーのBaby mary、Yusuke Devilといったファッション関係者に加え、二足歩行ロボットのASIMO(アシモ)やプロレスラーの蝶野正洋まで多彩な顔ぶれだ。

Fashionsnap.comより)

すこし前の『恋するフォーチュンクッキー』のような流行り方ですね。上手い下手関係なくダンスで繋がれるって、もう見ているだけで幸せ。しかも原宿バージョンを見ると、作り手の狙い通りに、原宿に行きたくなる。観光ムービーになってる。

そういう点もふくめて、音楽がもつ力って改めてすごいなと思いました。全世界で大ヒットしている『アナと雪の女王』も、ストーリーよりも音楽でヒットしているし。気がつけばファレルの『Happy』、絶賛ヘビロテ中です。

 

顔写真を137個のお寿司で描きます。後半のダンスは振付稼業air:manによるもの。

顔写真を137個のお寿司で描きます。後半のダンスは振付稼業air:manによるもの。

あ、余談ですが、僕も先日、ハッピーな音楽をど真ん中に据えたWebコンテンツを公開しました。

その名も『ハッピーバースシー』。

宇宙にひとつだけのハッピーバースデー・スシ・ムービーを作って、誕生日をたのしくお祝いしよう!‥‥というもので、お祝いしたい人の顔写真がお寿司になって登場します。

歌は加藤登紀子さん(『紅の豚』のジーナ!)。企画から映像制作、サイト制作に至るまで、ハッピーにあふれたお仕事でした。

チームPerfume / テクノロジーで“想い”を身にまとう

昨日、全国ツアーが発表されたばかりのPerfumeですが、昨年の夏に河尻亨一さん主宰のもと出版された『クリエイティブ手帳』に寄稿したPerfumeに関するコラムを掲載します。

 

私たちは Perfume
ここに来た
日本は遥か東 出会うために
世界と 私たちと みんな
ここに立つ
日本とつながって 伝えるために
世界に

2013年6月20日、Cannes Lions 2013での電通によるプレゼンテーション「Happy Hacking: Redefining the Co-creation Frontier(ハッピー・ハッキング:共創の最前線を再定義する)」でゲストとして迎えられたPerfume。冒頭の言葉は、世界中から集まった4,000人もの広告関係者が見守る中、メイン会場であるグランドオーディトリアムのステージから世界に発した彼女たちの挨拶(メッセージ)である。

厳かな雰囲気から一変し、小刻みなビートと衣装に映し出されるプロジェクションで始まる『Spending all my time』エクステンデッドミックス。この模様はCannes LionsオフィシャルYouTubeでも全世界に生中継され、世界へのお披露目となった。

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日本で固唾を呑みながらモニタにかじりつくように見ていた僕・・・・を含めたTwitter上のPerfumeファン(Perfumeクラスタ・通称 パフュクラ)は「いいぞいいぞ!」と、まるで甲子園に出場した母校を見守るかのような緊張と連帯感をタイムライン上で共有していた。しかもプロジェクションマッピングで3人の全身に投影されていたのは、サイバー部門でSILVERを獲得したグローバルサイトに集約されたファンからのツイート。僕のタイムラインでは「俺もカンヌデビューw」というツイートも見られた。

冒頭の「日本とつながって」を体現したこの粋な演出こそが、2010年よりPerfumeのLIVEアクトの演出を手掛ける真鍋大度氏(ライゾマティクス)の真骨頂だと思う。これまで数々のテクニカルなアプローチから、ファンとの間に物語を紡ぎ出してきた。メンバーのあ〜ちゃんはこの日のことを

「みんなの想いでPerfumeはつくられているんだっていう、前々から私が思っていたことを形にしてくれた」

と、後日ラジオでしみじみと語っていた。

perfume01ここで「Perfumeグローバルサイト」について触れておこう。世界展開にあたって、ワールドワイドに自己紹介する拠点として生まれたWebコンテンツにもかかわらず、肝心の彼女たちの顔写真やアートワーク、PVなどは一切ない。不親切なほどに情報がなく、あるのは中田ヤスタカ氏のバキバキのBGMと、それに合わせて踊る3人の3Dモデリング映像のみ。

当初は、ノンバーバルな世界観の中で最小限の構成に絞り込んだ「記号としてのPerfume」をキャッチーかつミステリアスに体感してもらうことが狙いなのかもしれない(海外ファンにはYouTubeという強力な補完サービスがあるし)と思ったが、実はそうでもなさそう。

perfume02いつでもつながれるオンライン上の「ステージ」は、公開時からツイートを集積してビジュアライズする機能を持っていた。ティザーサイトは専用ハッシュタグでツイートすることで3人の3D CGによる全身像が浮かび上がる。それはハイコンテクストな「ファンレター投稿」。さらに3人の3Dデータをダウンロード可能とし、コアなファン(でありクリエイター)たちによってさまざまなテクスチャーで踊るダンシングビデオが作られたり、3Dプリンタで3人のフィギュアが作られたり。もはや「海外への自己紹介」としてのグローバルサイトではなく、3人とファンをつなぐプラットフォームになっている。ノンバーバルな顔して、言葉を集積する装置だったのね。

この一連のプロジェクトはふつうに彼女たちの音楽を聴いて応援するライト層にとっては敷居が高いと思われるが、真鍋氏には「あえて少し挑戦的なアプローチをする方が受け入れられる」という思惑があったという。「つくれるファン」への過剰サービスに、「つくれるファン」は過剰に応える。それが世間一般でのPerfumeのブランディングにもつながっている。超不親切で、超親切。ひとことで言えば、尖ってる。

やがてサイバーな「場」に集まったファンの言葉やアクションは、LIVEのプロジェクションマッピングによって3人の生身の体に“還元”される。それは本人たち自らが「想い」を身にまとった瞬間だった。カンヌのサイバー部門でSILVERを得たグローバルサイトは、その賞を授与されたレッドカーペットの先にあるステージで完成したのだ。

そんな粋で手の込んだ演出を下支えする技術もすごかった。舞台袖からリモコン制御で5回も変形させていたという衣装や、正確かつ俊敏に踊る3人の全身とリンクするプロジェクションなど、開発と実証、リスク回避策まで練られた装置をたった2ヶ月で準備したというのだから脱帽。まじで。

当日の舞台裏を真鍋氏自身はこう振り返る。

「当初与えられたセッティング、キャリブレーションの時間は始まる直前の15分間のみ。メンバー3人は本番までステージに立つことは許されずぶっつけ本番でやるしかないという非常に厳しい条件で、さらに彼女達は大阪でライブを終えてすぐに渡仏してライブという過酷なスケジュールでした。当日の会場のセットも、その日まで分かんなかったもんね(笑)。 」

『Perfume at Cannes Lions! 真鍋大度&菅野薫が、共創の最前線“ハッピーハッキング”の想いを語る』より)

そんな裏方の苦労はみじんも感じられず、ただただ彼女たちのパフォーマンスは日本人ならではの「所作」と呼びたくなる優雅さにあふれていた。真っ暗なステージに浮かび上がるカラフルなグラフィックは万華鏡のようで、直線の美しい純白の衣装は折り紙のよう。複雑に折りたたまれ、リモコン制御で動くプリーツは現代版の歌舞伎の早替えである。決して単純に海外受けを狙ったものではないだろうが、「そう見てしまう」自分がいる。Twitterではすぐさま3人の衣装をキャプチャしてギミックを紹介してくれる人までいて、ありがたい。

 

たった8分間ながらも強烈なビジュアルを披露したLIVEは、Perfumeの個性の一部を象徴的に切り出して幕を閉じた。

「今までできなかった、MVとかの映像の中だけで合成していたようなCGとかが、ライブで見せられるようになったのは、三人だけで立つステージに無限に幅が広がったなと思います」(『Switch』Vol.31・かしゆか)

「大度さん達がいなかったら、こういう前衛的なことをしてるグループには絶対見えなくて。だからPerfumeのかっこいいイメージをつけてもらってます」(同・のっち)

広島出身の、売り出し方を秋葉原あたりで彷徨うアイドルから一転、中田ヤスタカプロデュースにより「テクノポップユニット」としてオリジナルの位置を不動のものとしたPerfume。もともと肉声をヴォコーダーで変換されることで注目を浴びたテクノポップユニットは、LIVEパフォーマンスやファンとの接点でもテクノロジーを武器にすることで飛躍した。とまとめると3人がロボットのようだが、ロボットのように振る舞える肉体と表現力、それに相反するチャーミングな人間性に引き込まれる。って、完全にファンレター投稿になってきたぞ。

チームPerfumeのHappy Hackingは、これからもさらにHappyな世界を私たちに投影してくれるだろう。すべての想いをインプットし、その身にまとって。

(2013年8月31日寄稿のテキストに加筆・修正)

 

そして今。

昨年10月に発売されたアルバム『LEVEL 3』を引っさげて東京・大阪の2大ドームで行われたツアー Perfume 4th Tour in DOME 「LEVEL3」 (初回限定盤) [Blu-ray] は必見です。これについてはまた今度じっくり書きたい。

巨大神殿からの脱出

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幕張メッセで前代未聞の3000人規模で開催されたリアル脱出ゲーム『巨大神殿からの脱出』のデバッグ公演に行ってきた。

謎制作のSCRAP加藤さんと堺谷さんには『ビックロ機密文書を探せ!』でもお世話になりました。

再演の可能性があるのでネタバレになることは一切書けないけれど、謎を解いて次のステップに進む快感はやっぱり気持ちいい。

本公演のあとの加藤さんのBlogを読んだ。世界記録、おめでとうございます。

 

そうそう、舞台の裏側を見せてもらいました。
クラタスの生みの親、倉田さんにもお会いできました。

DSC05835

壁面にうつる影は演出ではなくて、パイプ椅子の作業場もリアルな作業場。
クラタス、超かっこよかったっす。巨大な造形物への畏敬の念が半端なかったわ。

木谷さん、ありがとうございました!

Reblog「阿久悠作詞憲法15条より」

師匠から教わったこと。
大事なことなのでメモ。

ぶ厚い手帳:コピーライター中村禎の場合

コピーライター養成講座の専門コース9代目中村組(中村クラスってことです)で紹介した言葉です。阿久悠さんの言葉なんですが、作詞というジャンルを超えて、コピーライターにも通ずる心があると思い、ここに紹介します。
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■第5条
個人と個人の実にささやかな出来事を描きながら、
同時に社会へのメッセージにすることは不可能か。
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■第7条
電信の整備、交通機関の発達、自動車社会、
住宅の洋風化、食生活の変化、生活様式の近代化と、
「情緒」はどういう関わりを持つだろうか。
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■第8条
人間の表情、しぐさ、習癖は不変であろうか。
時代によって全くしなくなったものもあるのではないか。
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■第12条
七五調の他にも、
音楽的快感を感じさせる
言葉があるのではなかろうか。
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■第14条
時代というものは見えるようで見えない。
しかし時代に正対していると
その時代特有のものが何であるか、
見えるのではなかろうか。
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■第15条
歌は時代とのキャッチボール。
時代の中の隠れた飢餓に命中することが、
ヒットではなかろうか。
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「時代の中の隠れた飢餓」という言葉にハッとしました。
確かにそれは、ある。見つけられるかどうか、だと。

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Cannes Lions 2013 Book Project

2013年8月31日、代官山蔦谷書店にて、とある本の出版記念イベントがありました。でも、そのとき肝心の本はまだ完成していませんでした‥‥どゆこと?

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『Cannes Lions 2013 Book Project』。

雑誌『広告批評』元編集長の河尻亨一さんが立ち上げ、オンライン上に集った約250名(8.31現在)の広告関係者やカンヌウォッチャーが今年のCannes Lionsの事例やトピックをアップ。それを一冊の本に編むリアルタイム・クラウド編集会議&雑誌制作プロジェクト。

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