Cannes Lions 2013 Book Project

2013年8月31日、代官山蔦谷書店にて、とある本の出版記念イベントがありました。でも、そのとき肝心の本はまだ完成していませんでした‥‥どゆこと?

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『Cannes Lions 2013 Book Project』。

雑誌『広告批評』元編集長の河尻亨一さんが立ち上げ、オンライン上に集った約250名(8.31現在)の広告関係者やカンヌウォッチャーが今年のCannes Lionsの事例やトピックをアップ。それを一冊の本に編むリアルタイム・クラウド編集会議&雑誌制作プロジェクト。

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タグボート岡康道(と僕)の3月14日

3月14日。TUGBOATのクリエイティブディレクター、CMプランナー・岡康道さんのエッセイ集『アイデアの直前 – タグボート岡康道の昨日・今日・明日』の刊行記念トークショーに行ってきました。

トークのお相手は、岡さんとは25年来の付き合いであるCMディレクター・中島信也さん。「とにかくこの本を売って売って売りまくる」という使命感(?)のもと、著書の中から信也さんが文章をピックアップしながらトークは進んでいきました。面白いエピソードが次から次へと出てくる中で、僕が記憶に残ったお話をメモしていきます(なので会話のようで会話形式じゃないです)。

 

岡さん:最初に中島信也さんに企画コンテを見せたときは「なんだか意味が分からない」と断られて、じゃあもうひとりの売れっ子で同じ名字の哲也(CMディレクター 中島哲也氏/映画『嫌われ松子の一生』、『告白』等の監督としても有名)の方にお願いしたんだよね。

信也さん:哲也が作ったのを見ても分かんなかった(笑)。けどいま見たら分かる。僕は奥手というか大器晩成型?成長が遅いんですよ。

 

誰からも特に何も言われない選択。
これが僕たちを取り巻く世界をつまらなくしている。
(著書より)

 

岡さん:インターネット上でのクレームとかツッコミとかがすぐ企業に飛び込んでくるようになって、クライアントは突飛な案をまず除外する。それによって僕らの仕事がずいぶん痩せてしまったと思うんです。だからそれに負けない選択をすればいいんです。誰かに何かを言われてもいいやと。…僕らがやってるダイワハウスのCMは、そういう意味でクライアントが偉いですよね。

 

広告は発信していないのではない。
発信を自ら聞こえなくしている。誰からも特に何も言われない広告をめざすために。
(著書より)

 

岡さん:発信していないというか、自滅しているんです(今の広告は)。自分で辞めているというか。クライアントがセンスがないからとかバカだからとか、そういうことは全然なくて、作り手が「メッセージはやめよう、強く伝わることは避けよう」としている。だけど広告はしなくちゃいけないから、誰からも何も言われない広告を目指すんです。誰からも何も言われない広告って、みんなが知っている人をTVに流すことなんです。だからタレントが出てきた方がいいんです。そしてヒット曲を流した方がいいんですね、かつての。決裁者が青春期を過ごした80年代90年代のヒット曲です。そうすれば誰からも何も言われない広告が出来ますよ。しかも一見メジャー感がありますよね。こうやって広告は自ら聞こえなくしているんだろうな、と思うんです。

 

広告のように不純な表現物がそんなにも健康的であることの不健康さに誰も気づかないのだろうか。(著書より)

 

岡さん:僕らは「明るく楽しいものを作れ」とよく言われるんですね。いけないのはその反対ですよね。でも広告って人に何かを売ろうとしているわけで。つまり目的が不純なんです。それが分かってるから、それをネタとして話せば不健康じゃないじゃないですか。ところが明るく楽しく爽やかに不純なことを企む人って、不健康でしょ?広告自体が健康的であろうとすること自体が病気だな、と僕は思う。逆に言えばすこし不健康な感じのある広告を作りたいんです。

 

信也さん:岡さん、けっこう不健康めのやつ、多いですよね。岡さんが企画したものってパーソナルな感覚なものが多い。それって一般的じゃない。すごく歪んでて。

 

 

つまり場違いとアイデアは一直線上に並んでいるのだ。(著書より)

 

岡さん:アイデアとはマイナーな、場違いなものなんです。それをメジャーにするのがクリエイティブディレクターやCMディレクターの仕事。だから場違いを恐れてはいけない。場の空気を読めない人っていますけど、それもある種、アイデアを言っている可能性があるんです。そういうのを打ち消していって穏やかに速やかに進行する会議って、結局なにも生み出していないことが多い。

 

‥‥というわけで、予定を1時間オーバーし、合計3時間弱にもわたる充実したトークセッションのごくごく一部を書き起こしました。ずいぶん真面目な箇所だけを抽出しましたが、現場は抱腹絶倒、笑いの絶えない3時間でした。とくに信也さんのハゲじゃなかった坊主ネタは鉄板。

「広告はもともと不純なものだ」というお話は、岡さんの電通時代の先輩であり僕の大学時代の恩師でもあるクリエイティブディレクター・小田桐昭さんが授業で仰っていた「広告は猥雑なメディアです」という言葉とリンクしました。

これはその当時(2004年頃?)の講義ノート。

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授業では「堀井博次特集」「海外CM特集」などと銘打って数々のCMを見せて頂きました。僕がTUGBOATの作るCMのファンになったのは、その中の「岡康道特集」がきっかけでした。

 

 

アイデアの直前 —タグボート岡康道の昨日・今日・明日(Amazon)
大人(50代〜)になることが怖くなくなる、むしろちょっと楽しみになる本です。
自分はこんなにも真摯に生きられるだろうか。

関連リンク:TUGBOAT 10 Years_vol.01

すてきなソース

前の会社の後輩で、現在mountにいるデザイナー、長谷川弘佳ちゃんに声を掛けてもらってコピーをお手伝いした本が完成しました。

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arigato Inc. presents ART & Recipe BOOK
東京 西麻布フレンチレストラン Les Rendez-vous de Tokyoの アートレシピ本。 イラスト、デザイン、編集は 長谷川弘佳さんによる 簡単に作れるし 見て手に取るのもうきっとする素敵な1冊です。(Amazonの紹介文より)

ソースをテーマにした美しいレシピ集です。
まだ見ぬ新たなソースを求めるシェフの冒険、という世界観で書きました。
絵本のように読むことも、画集のように見て楽しむこともできます。

 

日曜日、出版記念パーティーが開かれました。
写真は、アートディレクター・長谷川弘佳と、Les Rendez-vous de Tokyoのオーナーでこの本の発起人の綾乃さん、そしてそのお二人を繋いだ、スープストックトーキョーやPASS THE BATONを展開する遠山正道さん。

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あれは2011年の春。大きな仕事で一週間会社に泊まり、ぎりぎりの精神状態でクライアントから没をくらって二人で大泣きした2年前からしてみれば、こんな素敵な本を誕生させた弘佳さんの成長には別の涙を誘うものがありました。

正直、すこしは「はじめての紙の仕事」らしい若葉マークっぷりが出ちゃうのかなと思っていたら、ぜんぜん。プロの仕事でした。そして、なにより作り手の愛情が感じられる本です。そういう体温のあるものに関わらせてもらったことに感謝です。

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SAUCE

ちょっと高いですが、いい本です。

『絵と言葉の一研究』

寄藤文平さんの『絵と言葉の一研究 「わかりやすい」デザインを考える』

本書は、アートディレクター、イラストレーターの寄藤文平氏が、「どうすれば、わかりやすく伝えられるのか」について、自分の経験とデザイン例を使って、解き明かしていったものです。20年以上になるデザイナー歴の中で、寄藤氏が体得してきたイラストやデザインの技を自ら分析した本でもあり、彼の今後のデザインのテーマがつまっているアイデアノートでもあります。(Amazonの内容紹介より)

 

会社の後輩から借りたのですが、面白すぎて一気に読んじゃいました。

metro寄藤文平さんといえば、東京メトロのマナー広告「家でやろう。」シリーズや、『R25』の表紙キャラクター、JT「大人たばこ養成講座」でもお馴染みのアートディレクター。

均質な線と少ない色数、思わずツッコミを入れたくなるとぼけたキャラクター、それらをイヤラシサのない適度な風刺の効いたイラストにしてインフォグラフィックのように表現する人‥‥という、たぶん世間とそう変わらないイメージで「寄藤さんらしさ」を捉えていました。この本を読むまでは。

本の帯に「正直、わからなくなってきました。」と本当に正直にうろたえる著者のメッセージがありますが、ここまで正直すぎる独白を受け取ってよいものか?とこっちがうろたえるほど。絵と言葉を起こす、つまりイメージやアイデアを形に起こすプロセスが超超超克明に記録されています。これほどまでに奥底までダイブしないと表現は研ぎ澄まされないのか。

例えば第6章にある、「わかる」は「わかりやすい」とは違う、という話。

ふつうに考えて、ある物事が「わかる」とき、同時に「わからない」ことも増える。僕はデザインについて母よりもわかっているけれど、母よりも「わからない」と感じている。「わかる」というのは、「わからない」ことが生まれて、それをまた「わかる」という「わかる⇄わからない」の反復運動だと考えた方が自然だ。
 そのように考えると、「わかりやすくする」というのは「その運動をより活発にする」ことだといえる。「わかりやすく伝える」ことは、「その運動がより活発になるような伝え方をする」ということだ。
 だから、いきなり「わかった」状態にしようとしなくてもいい。「わかった」というのは運動をいったん打ち切ることだから、むしろ「わかりやすさ」の逆だ。「わからない」ほうがいいこともある。

さらに、次の一文を読んでどきっとしました。

 大量の「わかりやすさ」の中で、さらなる「わかりやすさ」を追求する。僕自身、そういう流れの中でデビューし、その求めに応えることで仕事を得てきたように思う。でも、いつのまにか、「わかりやすい」ことがそれだけで価値を持つようになった。

「わからなくても、わかりやすければいい」

 そこにあるのは「わかりやすさ」ではなくて、モノクロコピーのように単純化された水平線ではないかと思うけれど、そういう情報のほうが流通しやすい。

 おそらく、僕が引き裂かれた気持ちになったのは、元をたどっていくと、そのように「わかる」ことから「わかりやすさ」が分離しつつあるからではないかと思う。

「デザイナーを辞めようと考えていた」とまで仰るほどご自身の仕事を分析されている。その分析は僕らプランナーにも、コピーライターにも必要な視点であるように思います。

情報は「データ」と「インフォメーション」に分けられる、というお話や、1冊の本のブックデザインを30通り以上つくっていくアイデアの抽出法など、ちょっと謎解きをしているような、推理小説を読んでいるような没入感もあります。

 

数年前に『大人たばこ養成講座』のサイトリニューアルのご相談を受け、一度だけ事務所にお邪魔したことがあります。

そのとき、いかにしてあの長年続いてきたグラフィック広告をWeb上で面白くするか?の案をいくつか持参しましたが、ぜんぶ没。

理由は「文字を読んでから絵で笑わす順序になっていないからなんです」。確かに見返すとそうなってました。僕が持って行ったのは「あの寄藤さんの絵で」「なんか賑やかなことをして」「文字で補足しよう」としてた。マナー広告という目的からもちょっと逸脱してました。いま思えば。「正直、わからなく」なるほど考えを詰めきれてもいませんでした。当時の自分に読ませたい。

お正月休みの課題図書におすすめです。

 

Amazonリンク:絵と言葉の一研究 「わかりやすい」デザインを考える

コピーの今とこれから_3/3

TCC(東京コピーライターズクラブ)50周年特別企画のトークショー、
『コピーの今とこれから』レポート、最終回です(1回目はこちら、2回目はこちら)。

 

udon谷山さん:今年、「うどん県」っていう言葉が流行語大賞にノミネートされたんですね。でもTCCの新人賞には入らなかった。1票差で落ちちゃったんですよ。おそらく、「うどん県」って上手っぽくないんですね。テクニカルじゃないというか。でも世の中に広がったんですよね。

秋山さん:あれだけ見るとピンとこない。現象として見ないと。レディー・カガの方がまだピンとくるね。

谷山さん:レディー・カガも新人賞に落ちたんです。

秋山さん:あれも入ってないの?

谷山さん:入ってないです。

佐々木さん:うどん県とレディー・カガを落としたのは今年のTCCの汚点‥‥。

谷山さん:そこまで言いますか(笑)

佐々木さん:まちがいなくヒットしたし、話題になりましたからね。今後はいろんな県が「うちもうどん県みたいなのやろうよ」とか言うのが容易に想像できますし。だから来年に敗者復活賞をあげるとか。

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