カンヌ勉強会 2014 – ダイレクト系など

昨日のカンヌ勉強会 2014 – フィルム系に続き、河尻さんによる、ダイレクト、プロモ、チタニウムなどで受賞しそうなものをピックアップ。

 

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河尻さんチョイス
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▼ FIRST KISS

WREN(ウォーレン)というアパレルブランドの服を着ている男女。初対面同士の彼らにカメラの前でラブシーンを演じてもらうドキュメントフィルム。「素人」が何かするのは定番になっていて、キスまでしてもらえるようになった。素人がファッションモデルの代わりをしている。
YouTubeで8,000万ビューを超えている。

 

▼ Skype – Stay Together

フィルム系だけど、これも「素人」が出ているシリーズ。血も通わないようなイメージのSkypeがやっているという面白さ。笑いを求めてない。感動を求めている。感動はシェアを生みやすい。

【COMMENT】
笑いは文化的な背景や笑いに対する成熟度などに差異が出てしまうので、それに比べて感動系の方が広くあまねく共感を得やすいんでしょう。あと、素人が主人公になるというのは世界的な流れなんですかね。

 

これもフィルム系だけど‥‥

▼ John Lewis Christmas Advert 2013 – The Bear & The Hare

ディズニーのチームが手がけたらしい。

じつは全編CGではなくコマ撮り撮影で作られた!という驚きもある。

メイキングを見ることで二度驚く。そんなメイキングを見せることももはや当たり前の手法になりつつある。

 

▼ Digital News paper holder

アワードムービーの典型。社会的背景、問題点→アイデア→メイキング→仕組み(図説)→効果→成果。

 

▼ British Airways – #lookup in Piccadilly Circus

子供の頃を思い出させるビジュアルをインタラクティブに再現しただけでなく、ビルボードには飛行機のフライトナンバーや目的地なども表示されるとのこと。でも単純に素敵。

ケーススタディビデオもあったのでご紹介します。

 

▼ MILKA – LAST SQUARE

パッケージにIDが書かれていて、それを元に「ひとつだけ欠けたチョコ」を大切な人に贈れるサービス。企業姿勢を体現。

河尻:チョコ1欠片もらって嬉しいんかな?っていうのはありますけどね(笑)。
石井:でもリアルに1つ欠けたパッケージになっていて、それを贈るところまでやってるのはすごい。パッケージのビジュアルが上手い。

 

▼ DHL – DHL is Faster

温度で変わるインクを仕込ませた箱を用意して、ライバル社に運ばせる。
河尻:「なかなか挑戦的ですけどYouTubeでもそんなにバズってなくて(笑)」

【COMMENT】
騙すという手法は昔からありましたが、そこにテクノロジーを上手く使っていて、かつ、さほど手が込んでいない(シンプル)という点に好感を持ちます。

このほかで上手な「騙しの手口」としては、オランダの『Sweetie』がすごい。

児童売春の撲滅を目指す団体が仕掛けた、CGの「10歳のフィリピン人少女」。1,000人以上が検挙されたという実績が評価されそうです。
これ自体はぜんぜん「広告」じゃないですが、このYouTube動画から団体への寄付ができるようにもなっています。

 

▼ NAR mobile – Life saving cable project

スマホ同士をつなげるケーブルで、充電を分け与える仕組みを通して献血を訴えた。
分かりやすいけど本当にこんなことできるのかな?

 

▼ social swipe

カードをスワイプすればパンが切れる。=募金になる。
見れば分かる。ビジュアルのつくり方が上手い。

【COMMENT】
British Airwaysもそうですが、デジタルサイネージ広告にインタラクティブ性が加わったものは、元々が交通広告という「通り過ぎて無視される」という問題との闘いであることを考えると、ビジュアルもオチも分かりやすいことが大前提。その意味でsocial swipeはさらにソーシャルグッドな意味合いもプラスされてて素敵だと思いました。

紹介されていなかったデジタルサイネージの事例で個人的に好きなのはコレ。

Unbelievable Bus Shelter | Pepsi Max

あと、コレも。

Photoshop Live – Street Retouch Prank

コレも分かりやすい。

 

▼ climate name change

one show受賞作。
台風の名前は人名(カトリーナなど)だから、自分たちで決めたい。
気候変動がこんなに起きてるのに何も政策を立てない政治家の名前をつけてやろう!というNPO団体の運動。
石井:去年も似た考えのがありましたよね、ロシアで。
河尻:悪路を放置する行政に対して、その道路で政治家の顔を描いて、工事させることで消させたやつですね。

 

 

そろそろウェアラブルも出てくるのでは?

▼ Ravijour – TRUE LOVE TESTER

Ravijourという、セクシーさが売りの下着メーカー。
制作はPerfumeの演出でおなじみのライゾマ!いいなぁ。

 

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カンヌ現地の情報
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・今年は97カ国から37,400エントリーがあった
・カンヌ現地では三位一体の楽しみ方をしましょう

 CELEBRATION:賞としてのカンヌ
 LEARNING:60個あるセミナーも出た方がいい。ルー・リードとか(※)。
 NETWORKING:10,000人が交流を深める。名刺が何枚あっても足りない。ヘッドハンティングも。

1日に1回、人気セミナーをYouTubeで生中継しているので見てみましょう。

※今年はU2 ボノとAppleのデザイナー、ジョナサン・アイヴが登壇するとか。

cannes_guest

石井:現地で学ぶ広告漬けの1週間なんてない。自分は何ができるだろう?ということを見つめ直せる機会。行かなくても分かることももちろんある、が、世界一の広告祭としてそこにしかない熱がある。日本から抱えてきた仕事もあってパーティーもあって今年はW杯もあるから寝られないけど、それもひっくるめて修行みたいな重要な場所。

・日本にいる人は受賞速報とセミナーまとめを活用しましょう

6/28(土)14:00〜17:00
報告会をやられるそうです。

 

以上です。

最後に、河尻さんが「時間がなく紹介できなかった」作品をFacebookにアップされていたので、そちらをコピペして終わりにします。

▼ 43dbオーケストラ

▼ Google“Night walk in marseille” 
https://nightwalk.withgoogle.com/en/home

▼ giraaf

▼ spotify“forgotify”
http://forgotify.com/

▼ coca-cola – Radar for Good

★Sound of Honda“Ayrton Senna 1989”

これもライゾマティクス制作。素晴らしい。プロの仕事。

★NYC Recalling 1993 

 

6月15日からのアワードの現地速報が楽しみです。

 

関連記事:カンヌ勉強会 2014 – フィルム系

カンヌ勉強会 2014 – フィルム系

2014年も6月に入り関東は梅雨に突入‥‥と同時に広告業界ではCannes Lionsの季節の到来でもあります。

今年は6月15日〜21日に開催。

今年は6月15日〜21日に開催。僕も5つの仕事でエントリーしてます。。

今年も銀河ライター 河尻亨一さん(編集者)とキラメキ 石井義樹さん(CMプロデューサー)によるチョイスで「今年のカンヌ」を予想するプレ勉強会が開かれました。キラメキのオフィスでワインあけながら4、5人でやってた頃がちょっと懐かしい、100人規模の大きなイベント(しかも場所は京橋の東京スクエアガーデン)になっててびっくり。

 

以下にまとめてみましたが、「10 over 9」原口さんのNAVERまとめも分かりやすい&内容はほぼ一緒なので、そちらもオススメです。僕は僕で感想や他の事例も折り込みつつ書いてみます。

NAVERまとめ:前編(フィルム、フィルムクラフト部門への予想)
NAVERまとめ:後編(ダイレクト、PR、プロモ、デザイン、サイバー、モバイル、アウトドア、チタニウムなどへの予想)

 

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予想しにくい
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One Show、Newyork Festivalがあったものの、今年はCLIOが秋に移動しちゃったので予想しにくい。また、昨年が60周年ということもあり総じてレベルが高かったので今年は揺り戻しで低いかも。今年突然出した作品がダークホース的に受賞しちゃうかもしれない。

 

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クルマのコマーシャルが面白い
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▼ Volvo Trucks – The Epic Split feat. Van Damme (Live Test 6)

One Showグランプリ

石井:今年のグランプリ候補はこれなのかなー。他に強いCMがあまりないから。「最後にオチと意味がわかる」という、昔からのカンヌの(広告の)文法。圧倒的なクオリティ。英語がわからなくても、ボルボのトラックのスタビリティが優れていることを言ってるんだなーというのは伝わってくる。いわゆるLIVE TEST(実証広告)。

じつは6つあるシリーズのひとつで、これのティザーがまたイイ。

ヴァンダムのうろたえっぷりがカワイイ。
河尻:メイキングじゃなくてティザーなんですね。

 

▼ Volvo truck dynamic steering

これもOne Show獲ってる。

河尻:オチはバレるものだから最初から伝える。
実験、テスト的な作品。やってみた系、エクストリーム系
それをいかに広告ぽく見せないか。エンタメですらある。

【COMMENT】
そういえば昔、Googleも「SPEED TEST」(※)で湧かせましたが、実証広告ってバカバカしく極限に挑戦するというだけで笑えるし、男子小学生っぽいノリにその企業を好きになってしまいそうになる。Volvoはエンヤの品も無駄にあって、ディレクターの料理が素晴らしい。無駄に掛ける美学、の贅沢さ。

※Google – SPEED TESTS

 

▼ Honda – Illusions

石井:初っぱなでネタのからくりが分かっても騙されっぷりが気持ちいいからシェアされていく。シェアされることを意識して作っている。ロンドンのCMプロダクションgourgiosのクリス・パルマー監督(カンヌ常連)による仕事。近年多い流れとして、トップクラスの監督やカメラマンと制作費を使って、YouTubeでバズることを意図している。

たとえばthe mill(※)という世界有数のプロダクションが、どこまでが実写かを分からせないくらいのクオリティで映像をつくってYouTubeで爆発的にシェアされる時代。

【COMMENT】
the millがつくったCMで最近話題になったモノといえば、NIKEの「Winner Stays」。

お金かかってますね。贅沢さにアッパレ。

 

▼ Honda – Hands

石井:明らかにカンヌを取ろうと思ってる感がありますけどね(笑)。
ホンダの名作「The Cog」(※)からの流れを汲んだ「ナット1個からはじまるモノづくり精神」を手のひらで見せていくというシンプルさ。これまでの海外の作品が詰まってる、オマージュみたいな作品。

【COMMENT】
※The Cog(2003年)

古さを一切感じさせない。

 

▼ フォルクスワーゲン – Wings

スーパーボウルのCM。

 

▼ Chrysler and Bob Dylan Super Bowl Commercial

一昨年のクリント・イーストウッド(※)からのシリーズ。
今回はボブ・ディラン。アメリカの車づくりは最高であるというメッセージ。

※It’s halftime in America(実際、スーパーボールのハーフタイムに放送された)

 

▼ Video Bob Dylan
http://video.bobdylan.com/
撮影した物をTVみたいにザッピングでき、like a rolling stoneのように見られる。

 

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感動!
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▼ Apple Holiday

石井:個人的に好きなのはコレ。
One Show獲ってますね。感動系。カンヌでも何か獲るんじゃないかなと思ってる。
監督はランス・アコード。

ランス・アコードといえば‥‥これも。

 

▼ P&G Thank You, Mom

ソチ・オリンピックのP&Gの広告。
ロンドンオリンピックの続編。当時もゴールドを獲得。家庭用品をずっと作っているブランドとしてストレートなメッセージ。

ランス・アコードは元々カメラマンで、『マルコヴィッチの穴』や『ロスト・イン・トランスレーション』の撮影監督。VWの『the Force』(2011年)で監督として名前が売れた。長尺の編集が上手い。

 

▼ Google We’re All Storytellers

検索が可能性を拓くというGoogleならではのCM。

 

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笑い!
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▼ Old Spice シリーズ

良いにおいになった息子がモテるからナイスじゃない、けどつけたらモテるという話。
グランプリじゃなくてシルバーあたりを獲りそう。

 

▼ Budweiser Super Bowl XLVIII Commercial — “Puppy Love”

河尻:子犬と馬の話がアメリカ人は好きなんでしょうね。
カンヌって笑いのCMの殿堂みたいなとこがあった。今は違うけど。

 

▼ 2014 Super Bowl XLVIII Ad “Ian Up For Whatever”

パーフェクトなことばっかり起きるビールが「BUD LIGHT」というメッセージ。素人を使ったドッキリ企画だが、賛否両論あった。

 

冒頭でも言われていましたが、総じて今年は小粒な印象だそうです。それは昨年がカンヌ創立60周年記念で気合いの入ったCMが多く見られた分の揺り戻しか?という話も出ていましたが、フタを開けてみなければ分かりません。というわけで、明日は河尻さんパートの「ダイレクト、PR、プロモ、デザイン、サイバー、モバイル、アウトドア、チタニウムなどへの予想」をまとめてみます。明日につづく。

下から三番目の記憶

高校二年の冬、隣町の進学校に行った幼稚園からの幼馴染に「うちの文芸部で映画を撮りたいから監督とカメラマンをやってくれないか」と頼まれた。僕は父に買ってもらったビデオカメラを持っていて映画オタクだったからうれしい誘いだった。

学校という場所はどこも似ている。白い校舎は無機質だし黒い制服は詰襟に付けた校章とボタン以外はまったく同じデザイン。なのに初めて入る隣町の高校に緊張した。放課後の教室に集まった男四人と女一人の文芸部員と合流する。みな東大京大あたりを目指す秀才の集まりだ。ワイドコンバージョンレンズをつけた3CCDのビデオカメラを持っていたから辛うじて物怖じせずに済んだ。むしろこの中では自分が監督。優越感がなかったと言えば嘘になる。

メンバーの紅一点の女子・Sさんは150センチないくらいの小柄な体型だったが、明るく活発に話す、社交的で聡明な印象。でも頭の回転が速いから敵に回すと怖いだろうな。誘ってくれた幼馴染は彼女に好意を寄せていると言っていた。僕の耳元で彼女に聞こえないように「どうです?」と訊いてくる(彼は小学生の頃から誰にでも敬語を貫いていた)。「うん、かわいいね」。すこし気が強そうだけど華奢なその人を見て、いかにも彼が惚れそうなタイプだなと思った。

その場で彼らの脚本を読んだのかどうかも忘れたが、自己紹介も早々に、さっそくカメラリハーサルをした。折しも庵野秀明監督が全編miniDVカムで撮影した『ラブ&ポップ』が公開されたばかりの頃で、おなじカメラでおなじ女子高生を撮るというだけでなんだか面白かった。赤いレンズフィルタをつけて、Sさんが廊下を走るところを撮ってその日は終わった。それが最初で最後の撮影だった。

Sさんから家に電話がかかってきたのはその日の夜だった。1998年の高校生はまだケータイを持っていない。連絡網と称して互いの電話番号でも交換したのだろうか?今となっては思い出しようもない。二階の自室につなぎ直して「どうしたんですか?」と聞くと、受話器の向こうの彼女は妙なことを言い出した。

 

夜分すみません。
私、明日からダイエット始めるんです。
その前に今のからだを残しておきたいから、
今日のカメラで私を撮ってくれないかしら?

 

「かしら?」会ったときからおかしな言葉遣いの人だなと思っていた。四国の田舎なのに訛りがなくて口調が大人びている。いやその前に言ってることの意味がわからない。興奮した。

ダイエットって、じゅうぶん痩せとるやないですか。言ったそばから昼間の彼女を思い出そうとする。小柄だった。わけのわからないことを平然と言ってのけるので、京大を目指す人は頭が常人とは違うんだなと納得させた。じゃじゃじゃ、じゃあ、明日の放課後、駅で会いましょう。学校が終わったらデッサンの予備校に通わなきゃいけないので時間がないですが、アッテハナシマショウ。突然の提案に返すことはこれが精一杯だった。デッサン教室とか本当はどうでもいい。震える手で受話器を置き、ビデオカメラの充電器をセットしてヘッドフォンでBjorkを聴きながら翌日に備えた。その日の教室での友達との会話や授業内容はおそらくその日時点で覚えていない。すべての意識が放課後の駅と鞄の中のビデオカメラの往復だった。

 

今日(2014年6月1日)、浪人時代からの友達が惚れているという店員さんのいるカフェへ気まぐれに行ってみて、ふと、こんな昔のことを思い出した。もちろん今夜は店員さんから僕に電話がかかってくることはないし友人の恋を応援したい気持ちでいっぱいなんだけど、自分にもまだどこかにドラマが落ちてないかなぁと思う。もうちょっとライトなやつで。

 

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結局、駅で待ち合わせた二人はトイレの入口で怖いおじさんのようなおばさんに睨みつけられ、電車に乗って松山の美術予備校まで行った。会ってまだ二日目なのに電車の中で手を繋いだ。予備校の前まで一緒に歩いてくれたSさんは別れ際にキスをして去った。

「ダイエット前の私を撮って」という提案のわけのわからなさがK点になっている僕には、その瞬間も、その後のすべてにも疑問を感じることがなくなっていた。ただ受け止めるだけ。K点越え目指して飛びつづけていればいいや。彼女には他に男が三人いて、そのうちの本命が京大に行ってしまい遠距離になって寂しいときで僕は四番目だと知っても何にも思わなかった。幼馴染への罪悪感もなかった。何も感じないことが気持ちよかった。きっと、そう思い込まないと彼女との関係が絶たれる気がしていた。

ビデオは別の日に回したけど翌日に庭で燃やした。やっぱり何も感じないなんて嘘だ。モノが残るということがなんとも怖くなったのだ。そもそも彼女はテープを欲しがらなかったしminiDVを見る術も持っていなかった。なのに「撮影代」と称して二千円をもらった。

その後も僕らはほぼ毎日会った。会えない日は固定電話で八時間くらい電話した。仰向けになって受話器を顔に置いたまま腕組みをして話す技を身につけたのはこの頃だ。京大を目指す人と付き合っているのに、成績は学年で下から三番目まで落ちた。