西東京のメモリー

これを書いているのは2013年8月27日ですが、
じつは長らく「下書き」として放置していました。
日付をずっと巻き戻して7月14日のこととして書きます。

 

今日、7月14日は3度目の結婚記念日。
1週間前に思い立って箱根の旅館を予約して、
付き合って13年目にして初(じぇじぇじぇ)の二人旅を敢行した。

その2週間前、僕は立川にいた。

これも急に思い立って、
1999年に上京してから7年間を過ごした
立川を気まぐれに歩き、当時ヘビロテしていた
ミスチルの『Atomic Heart』や
くるりの『東京』を
iPodで聴きながら思い出を散策。

立川は妻と出会った美術予備校がある。
立ち寄ってみたけどあいにく日曜で閉まっていた。

予備校から6年通った大学、
そして新卒入社してからの半年間の
あわせて7年半住んでいたアパートに向かった。
かつて以上に掃除が行き届いていないこと以外は
何も変わっていなかった。

友達がふざけて鍵で書いた
玄関前のラクガキもそのままだった。

ラクガキはやめましょう。

ラクガキはやめましょう。

街は駅前を中心にデパートや駅ビルが新たに建ち並び、
その代わりに薄汚い雑居ビルや違法駐輪の一帯が整理され、
ずいぶん都会になっていた。

帰り際、よく通っていた定食屋で
メンチカツを食べようと思ったけど、
店じまいされていた。

自分が訪れるよりもずっと前にそうなっていたんだろう。
なのに、突然来て、勝手に感傷的になっているのが
なんだか身勝手な気がして、そんな自分に反省した。

第二の故郷は、ほんとうの故郷とちがって
帰るべき家も寄るべき友人も何もない。
あるのは自分の記憶と友達のラクガキだけ。

 

それに比べて旅は気軽でした。
新しい場所は辿るべき感傷コースがない。
観るものすべてが新しい。

ロープウェイから見下ろす大涌谷(おおわくだに)の温泉地帯。

ロープウェイから見下ろす大涌谷(おおわくだに)の温泉地帯。

無計画に宿だけ取って
ロマンスカーで行った箱根は
妻のジャニーズ好きがおおいに役だった。

ケーブルカーからロープウェイに乗り、さらに船で
芦ノ湖を南下し、観光らしい観光を楽しめたが、
すべてHey!Say!JUMPのバラエティ番組で
八乙女くんと藪くんと石原良純が訪れたコースらしい。

藪くんまで覚えられたのも妻の影響。

デブとは言わないが出不精の妻を旅に連れ出すには、
ジャニーズの旅番組を見せてからにすればいいんだ!と
結婚4年目で学んだ。

彼女は旅先でも自分の好きなものを追っかけている。

 

僕は何を追っかけて立川まで行ったんだろう。

シャワー読書ノススメ

もう2年以上も前になりますが、iPadの購入と同時に本格的な“自炊”をしようと、本の裁断機スキャナを買いました。

けっこう本格的な裁断機とスキャナ

けっこう本格的な裁断機とスキャナ

これで書棚を占拠していた文庫やハードカバー、雑誌などありとあらゆる本をバッサバッサ裁断し、スキャナでPDF化してiPadに転送する‥‥という作業を、一時期延々と繰り返してました。最初は「大切な本を切り刻むなんて」と躊躇する気持ちがよぎりますが、「欲しいのは本というモノではなく書かれてあるコトだ」と割り切って進めます。

ワイド判の『ナウシカ』。コマ割りが小さいのでこのサイズでこそ楽しめる。

もちろん、モノとして取っておきたい本は裁断しませんし、むしろ「これはいつでもどこでも読みたい」と思うものは率先してデータ化していきました。

まだ自炊歴が浅かった頃は、『風の谷のナウシカ』(原作マンガ)を自炊したらiPadのサイズになって原本よりも縮小されて読みづらくなったため、裁断後に紙の本を買い直すというバカみたいな失敗も経験しました。

 

さて、そんな自炊作業をつづけていると、PDF化したあとのバラバラになった「紙の本だった紙たち」はもう用済み。なのでゴミ箱に直行することになり、すぐ紙の山であふれます。

ついさっきまで「本」として機能していた。
とはいえほとんど本棚の肥やしになっていた。
バラになったことで久しぶりに日の目を見る「本だったものたち」。

その中から1ページを手に取ると、ついつい床にしゃがんで読みふけってしまう自分に気づきました。

「これって読む前に捨てるの、もったいなくない?」

だからデータ化したんでしょ。ていうかすでに読んだものでしょ?

「そうだけど、紙の本で読んでも自炊で読んでもこの“自炊の残骸”で読んでも、書かれてあるコトを読んでいるという意味じゃ一緒だし、どうせ捨てるならもういっぺん読んでみてもいい気が‥‥」

そこで一計を案じました。

分断された紙たちをファイルボックスに収納するようにしたのです。
で、それを脱衣所に置きました

この中に裁断した紙の束をごそっと突っ込みます。

この中に裁断した紙の束をごそっと突っ込みます。

 

はい、ようやくタイトルの「シャワー読書ノススメ」です。

1:入浴時、ファイルボックスに突っ込んでおいた紙を何枚か抜き取ります。

2:シャワーでバスルームの壁を濡らし、持っていた紙を壁に貼り付けます。

3:頭や身体を洗いながら、読みます。

濡れた壁にペタペタ

この方法で、今まで何冊もの本を読破しました。全裸で。

とくに雑誌で起こることですが、発見だったのは、今まで読み飛ばしていたページも必然的に読むようになり新たな出会いが生まれること。

入浴時にはなにも吟味せずにただファイルボックスに入っていた紙を取ってくるだけですから、自分の意思は反映できません。さらに壁に貼るとそのページしか読めないので、面白そうかどうかは関係なく読む体勢になります。それによって、こんなに面白い連載があったのか!とか、この人の文体素敵だな、とか、本来あるべき読書体験のたのしさに浸かれるのです。

つまり、これまでいかに読み飛ばしていたか?ということに気づくきっかけを与えてくれました。高校生の頃に買った養老孟司さんの『唯脳論』や佐藤雅彦さんの『考えの整頓』など短編コラムはちょうどいい長さで、面白すぎて長風呂してしまったり。

シャワー読書は、買った本を改めて立ち読みの状態に戻し、その本と出会った頃まで巻き戻してくれる体験なのです。そして、ちびちびとではあるけれど、しっかり最後まで読破できる。これまでの読書体験が1時間ドラマだとしたら、シャワー読書は朝の連続テレビ小説サイズといえるかもしれません。

入浴中の短い時間に読書の助走をつけて、そのあとも気になったらiPadでつづきを読んだり、翌日も浴室で読んだり。Webギョーカイ人ぽく言うなら、レスポンシブ読書術ってところでしょうか。

入浴中についついシャンプーボトルに書かれた成分表を読んでしまうような活字中毒の方にお薦めの読書術です。