新天地の昼と夜

新居に移った日の雨降る夜、AM1時すぎ。
傘を差して、彼女と近くの自販機に行った。

コンビニまでちょっと遠いので今後もお世話になりそうなサントリー自販機。
おなじみの青いベンダーマシンにはなぜかワンダもバヤリースも入っている。

バヤリースを買おうとしたとき、耳に飛び込んでくる音があった。

女性が喘いでいるよ?

彼女と目を合わす。
耳を澄ます。
ビニール傘を叩く雨音がうるさく感じる。
その向こうに、自販機の奥の建物の2階の位置から、たしかに女の声。

耳を澄ます必要などないことに気づく。
街中にはばかるどころか「聞いて!」と
言わんばかりの大声で、
「あ」と「ん」が交互に発せられる。

 

「ちょ、これは・・・」
「大音量のハリウッド映画じゃない?」
「日本人だよ!」
「猫じゃない?」「人だよ!」

 

議論は白熱しつつ、目当てのものは買ってしまったので

「帰ろうか」

と言って足を家路に向ける。
いちいち言わなくていいことまで言葉にしてしまう。

「うん、帰ろうか」

その間もあんあんは容赦なく耳に入ってくる。

 

すぐ近くには斎場があって、昼間は喪服の行列をよく見かける。
引っ越したんだなぁと感慨深くなり、バヤリースを飲み干した。